馬鹿猫は、加減ってものを知らない。

こう毎晩毎晩襲ってこられると、正直困る。

いい加減、俺壊れるような気ィするんだけどよ。

 

 

優しくしてやろうか

 

 

今日も1戦。

激しく俺を貪る化け猫に引きずられるようにして果てた。

そのままベットに倒れる俺とは対照的に、飲料水を取りに行く余裕まであるルッチ。

…正直、結構悔しい。

道力では敵わずとも、体力では対等以上でいたかったのに。

 

「…飲むか?」

「………おう」

 

そんな俺の心情を知ってか知らずか、スッとボトルを差し出してくる。

だけど、消耗した身体は水分を求めていたので、ここは意地を張ることなく受け取った。

こくり…っ

一口嚥下すると、冷たく冷えた水が身体に染み渡る。

それは、明らかにジャブラの身体に活力を与えた。

活力は、憎まれ口を叩く余力へと変化する。

 

「しっかしよォ…てめェ…ちったァ加減しろ」

「それだけ元気があるなら大丈夫だろう」

「ざけんな…オマエ、女に対してもこうなのか?」

「こう…とは?」

「………力押しなのかってことだよ」

 

溜め息交じりにそう言うと、心底面白そうに見つめながらのし掛かってくる。

肩口から、静かに笑う気配が伝わってきた。

 

「さぁ…数え切れるほど少なくはないんでな」

「うわ…っ!ソレ厭味かよ!?」

 

確かに、ルッチの顔は整っていて、相手に不自由したことがないことは明白。

だが、それを自分で言ってしまうのはいかがなものか。

 

「俺が本気になったら…壊れちまうだろ?」

「………まぁな」

 

確かに、鍛錬を積んだ自分ですらギリギリなのだ。

普通の…それも、自分とは身体のつくりも違う柔らかな生き物には、無理な話だと思う。

 

「いや…本気で欲しいと思ったことは…ないな」

「オマエ……」

「………これほど欲しいと渇望した奴はいなかった」

「は?」

 

気がつけば、自分の身体にねっとりと這う熱い視線。

 

「ここまで…骨まで食い尽くしたいと思ったのは…オマエが初めてだ」

「なななななっ!?」

 

さらっと何てこと言いやがるんだ、コイツは!!

 

「だが、食い尽くしてしまってはなくなってしまう…」

「………」

「全く、困ったものだな」

「……いや、この場合…ソレは俺の台詞だ狼牙」

 

本気で思案した表情で俺を見られても、正直困る。

それが、今にも食い殺しそうな眼をしていたら尚のこと。

それでいて、名残惜しそうに肩口をぺろりと舐められると、どう反応していいか分からない。

 

「……まだヤる気なのか?」

 

辛うじて口をついたのは、こんな陳腐な台詞。

 

「いけないか?」

「………普通、先に俺の身体案じねェか?」

「それだけ饒舌なら、平気だと思うが…」

「…………平気じゃねェっつったら?」

「…それでも襲う」

 

本当に、これが同じ政府の諜報部員の台詞なのだろうか。

この場できっぱりと『襲う』と言い切ってしまうなど。

“退く”という言葉など、この馬鹿猫の辞書には載ってないに違いない。

 

「んっとに、このままじゃ俺壊れるぞ」

 

ぽそりとボヤいて苦笑してルッチを見る。

もはや、諦めと言っても過言ではなかった。

だが、当の本人は、その流麗な眉を寄せて自分を見ている。

 

「………それは困るな」

「は?」

「壊れてしまっては……困る」

「んじゃ、自制しろや」

「それも無理だ」

「てめェ…」

 

どこまでも自分本位な男。

本当に、俺にどうしろっていうんだか。

 

そんな中、ゆっくりと抱き起こされた。

その手つきは優しくて、少々戸惑う。

だって、いつもの獰猛さとは正反対のものだったから。

 

「優しくしてやろうか」

 

そうして低く囁かれた台詞は、途方もなく似合わない台詞。

大体、今すぐにでも人一人消すことのできるような声色でいうことなのだろうか。

試しに優しいルッチとやらを想像してみたけれど……正直気色悪い。

このままだと壊れそうな気はしたが、描いた優しいルッチの図は何か厭だった。

あまりのミスマッチに、こみ上げる笑いが抑えられない。

 

「………何がおかしい」

 

コイツにしてみれば、至極真面目だったのだから、バカにされたように感じたのだろう。

不機嫌そうに顔を近づけてくる。

だけど、俺はそれにはあえて答えることはしなかった。

かわりに…

 

ビシャァ…ッ!!

 

「!?」

「ぎゃはははっ!びっくりしたか?」

 

手に持ったままのボトルを、奴の頭上でひっくり返した。

中に入っていたのは、まだまだ冷えたままの水。

それはルッチの髪を濡らし、顔を伝い、ジャブラの身体までも濡らしていく。

目の前には、多少のことでは動じない男の驚愕した貌。

…コイツにこんな貌をさせられるのは俺だけだ

 

「……何のつもりだ?」

「水も滴るいい男ってか?…らしくねェこと言ってんじゃねェよ」

 

心底愉快そうに、ジャブラはルッチの濡れた顔を引き寄せた。

“優しく”なんて甘い扱いなんて必要ない。

自分がこの位置に甘んじているのは、相手がルッチだからだ。

それ以上でも以下でもない。

 

「……来いよ」

 

ニヤリと笑ってペロリとルッチを唇を舐めるジャブラ。

その眼は鋭くルッチを見据えていた。

それを見て、ルッチの口元にもいつもの笑みが戻る。

 

「では、遠慮なく」

 

そう言って、お返しとばかりにキスを帰すと、そのままベットへと沈んだ。

 

お互いに濡れた躯のままで……

 

FIN

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くずのは「優しいのより激しいのが好きってどうなんだろ…」(やっぱMなの?)

ジャブラ「はァ!?ちちちち、違ェよ!!」(焦り)

ルッチ「そうか…やはりそうなのか…」(一人納得してうんうん頷き)

ジャブラ「だから!違うっつってんだろぉが、この馬鹿猫!!」

ルッチ「……だが、優しくしてやると言ったのを拒否しただろう?」(せっかくの好意を…)

ジャブラ「いや、だからアレは、ルッチらしくないってことが…」(じりじり後退)

くずのは「つまり、いつものルッチさんが好き、と?」(ラブラブなんだ…)

ルッチ「ほう、それはそれは…」(ニヤニヤ)

ジャブラ「あ゛〜〜もう!違うっての!!」(バンバン机叩いて抗議)

ルッチ「なら、リクエストに答えて俺らしくいこうか」(ひょいっとジャブラを担ぎ上げ)

ジャブラ「な!?降ろせ!降ろせってば!!」(ジタバタ暴れ)

 

ってな感じで、本日3戦目へ(笑)

…う〜ん、コレ表でいいのかなぁ(滝汗)←今更だっての